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東京での和・洋・中と極上の味を求めて、いろいろ食べ歩いた記録です。


by gokujyounoazi

京味(春)

 八重桜も散り始める4月中旬に、美味しい筍を食べるために「京味」を訪れた。2月に訪問した際、4月15日頃から末までが筍が一番美味しいと聞いていたからだ。本当に旬の筍は、糠であく抜きする必要もないくらい美味しいそうだ。

 以前、筍の刺身なるのもが食べたくて、千葉まで筍狩りに行った事があるのだが、あくがあり美味しくなかった。朝取りと謳っていたが、実際はどうなのだろうと疑問に思っていた。どんな筍料理が味わえるのか楽しみだ。

 梅酒を飲みながら、料理を待つ。メニューはおまかせなので、悩むこともなく気楽だ。もちろん、あれこれと悩んで決めるのも楽しいというのはあるのだが、その日の仕入れで一番美味しいと思われる料理を料理人の采配で出されるのも謎があって楽しい。

 カウンターの端の席に座らせてもらったら、前回もサービスしてくれた若手の料理人と目があった。どうやら覚えていてくれたような笑顔で迎えてくれたのも嬉しい。

 最初に供されたのは「鯛の粽、ゴリの甘露煮、コゴミの胡麻和え」だ。最初にちょっと米の料理が出されるのはお腹が空いている身に嬉しい。粽は寿司飯の酢加減も調度良く美味しい。コゴミの胡麻和えは季節を感じる一品だ。

 次は「焼き筍」が供された。2時間以上、皮つきのままで焼くそうだ。黒くなった皮を剥き、湯気の上がっている筍をご主人の西さんが切り分ける。木の芽のみじん切りを入れた醤油を刷毛でさっと塗る。あくなど微塵も感じられず、筍本来の旨みが味わえられる。木の芽の爽やかさが一層筍の味を引き立てている。とても美味しい一品だ。

 「木の芽田楽」は口に含むと凝縮された豆腐と木の芽味噌の味が広がる。何か木の芽だけでない味も感じられ、聞いてみると「ほうれん草も入れてあります。」との事だった。

 「めいきの煮物」は生姜が添えられていて、ほっとする味だ。

 「うすい豆の甘煮」は、ほんのりとした甘みで美味しい。普通のグリーンピースより色が薄く、皮も薄い「うすい豆」を使っているため、舌触りも良い。

 「鯛の白子、浜防風」は河豚の白子を思わせるくらい美味しい。土佐酢の味付けが良いのだろうか。口福を感じる一品だ。

 「白魚と芹の天麩羅」は前回も登場した一品なのだが、今回は白魚の成長が感じられた。大きさが以前食べたものより1.5倍くらい大きいようだ。あっさりとした白身で美味しい。

 「お造り」は鯛、鰈、鳥貝の三品。どれもこりっとしていて甘みがあり美味しい。

 「白子豆腐のお椀」は白子豆腐(白子とすり身で作った豆腐)に菜の花が添えてあり、葛仕立てになっている。白子豆腐は、滑らかな舌触りと旨みがあり、とても美味しい。

 「炊き合わせ」は鯛の子、筍、蕗、蓬麩だ。鯛の子の舌触りが楽しく、とても美味しい。それぞれ味がしっかりと含まれていて幸せを感じる。

 「渡り蟹の山吹和え」は渡り蟹の身をほぐし、それに、渡り蟹の子をまぶしたものだ。これを「山吹和え」と呼ぶと西さんが教えてくれた。今の時期、山吹も満開で、風情がある料理だ。添えてある蕨は土佐酢に山葵を入れたものに漬けてみたそうで、漬ける時間等で味が損なわれる恐れのある繊細な料理だそうだ。蟹の甘みを引き立てる味になっていた。これも美味しい。

 「筍ご飯」は筍とうすい豆が入っていた。うすい豆の味が勝っていて、筍の味があまりしなかったのが残念だ。「ハラスご飯」は相変わらず美味しい。

 デザートは「葛きり」と「ぜんざい」の二品を頂いた。相変わらず葛きりは美味しい。今回は中堅のお弟子さんが葛きりを作っていたせいか、やや細めになっていた。「ぜんざい」はあくを全く抜いていないというお話を聞いて驚いた。食べていて、あくは全然感じられないからだ。とても美味しい。

 店を出ると西さんは松葉杖をつきながら見送ってくれた。次は「鱧と早松の時期にいらっしゃい。」とのお誘いを受けたので、次回の訪問も楽しみだ。

 ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/
by gokujyounoazi | 2006-04-23 00:05 | 和食